しかしすでに述べたように、アメリカの経験から考えても、「能力」や「成果」の有無は、最終的には企業側の論理で、つまりはそのときの上司の主観で判断されることになる可能性が高い。
営業で売り上げた金額の何パーセントが給料の額、などというわかりやすい歩合制でもないかぎり、客観的で公正な、誰もが納得しうる評価軸なんてそうそうあるわけがないのだ。
自分は十分会社に貢献したつもりだが、会社の方はそうは思ってくれていない、などというミスマッチはすでに今でも職場で起きている。
エイジフリー社会ではこれがさらに増えることを覚悟しなければならない。
結局、能力主義と言っても、それはカッコつきの「能力主義」なのである。
その「能力」は、そのときの上司と馬が合っていたかどうか、もしかしたら盆暮れの付け届けをしていたかどうかで判断されてしまうかもしれないのだ。
それはフェアじゃない、不公平だといえばそのとおりだが、「それも含めてウチで期待されている能力だ」と言われてしまえばそれまでだ。
果たして日本の労働者は、このような「能力主義」を、年齢を基準とする評価よりも望ましいものとして受け入れられるだろうか?募集・採用はエイジフリーに?定年制がなくなり、これまでよりも解雇が頻繁になされる社会になったとしても、雇用の「入口」、すなわち募集・採用の局面もエイジフリーになっているのだから、年齢で差別されずに雇われる可能性は高まっているはずだ。
クビになる確率も増しているが、その後また雇われる確率も高まっているのだから、まあそういう社会もあっていいのではないか……そんな考え方もできそうな気がする。
しかし残念ながら、募集・採用の局面に関しては、どんなにエイジフリー立法が強化されても、それほど劇的な効果は期待できそうもない。
募集・採用時における年齢差別がこの世から消え去る、とは考えにくいのである。
そのことは、すでに前でも触れたが、アメリカの経験からも明らかだ。
「もうその年じゃあウチでは無理ですね、残念ながらクビということで……」と言われたら、「訴えてやる」となっても全然おかしくないが、採用面接で、「もうその年じゃあウチでは無理ですね、残念ながら今回はご縁がなかったと……」と言われても、訴訟までしようとする人はまれなのだ。
合理的な人間は、裁判などせずにその分の時間と労力を別の就職先探しに割こう、と考えるのである。
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